今年も紫陽花が咲いた。
紫陽花は数少ない、花に興味のない僕が子どもの頃から名前を知っている植物のひとつだ。だからというわけではないが、梅雨の季節を迎える頃に紫陽花が咲くのを見ると、なんとなく嬉しい。紫陽花は素敵だ。淡い色の優しさも好きだし、小さな花がこんもりとまるくなって咲いている姿もかわいらしい。
とりわけ、雨の日の紫陽花は美しい。雨には紫陽花、紫陽花には雨。
今年の関西の梅雨入りは遅かった。例年より一週間くらい遅いってニュースで言ってたっけ。でもやっと、天気予報に雲と雫と傘のマークが並ぶようになった。雨がいつも好ましいわけじゃないけれど、しかるべき季節にしかるべき気候が訪れることは大事なことだと思う。
雨の日の散歩は、傘を打つ雨の音、足もとを濡らすアスファルトの飛沫、濡れた風、灰色の光、青葉の匂い。これは、夏が生まれる前の、地球の予備運動。