笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

マウントアダプタのキャップがはずれない

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 演奏会の撮影に行った。
 公営ホールでの、アマチュアオーケストラのコンサートだ。オミクロン株のコロナが蔓延し始めているが、まだマンボウが発令されるほどではない。演奏会当日までヒヤヒヤしたけど、なんとか無事に開催された。

 メイン機材はニコンのZ6、サブにNikon1。
 APS-Cのレフ機もあるのにNikon1を使うのは、それなりに写って、レンズが小さいから。もちろん、Nikon1の1インチセンサーの画は大きなセンサーに比べると多少プアで物足りない。しかし、1nikkorの30-110(35mm換算の70-300ぐらいの焦点距離)はFマウントに比べるとめちゃくちゃ細いレンズで、これを持っていくと反響板の隙間や下手の覗き窓からさしこんで撮影することができる。今回訪れたホールの反響板は隙間が細すぎて出番はなかったが、ホールによっては袖から指揮者の正面を撮影できるのだ。もちろん、ミラーレスは作動音が静かだというのも、持っていく理由だ。演奏会の撮影は、ミラーレスに限る。

 さて、コンサート撮影といえば望遠レンズだが、今回はTamronの100-400を使った。Fマウントのレンズである。このレンズをZマウントのZ6に載せるためにはFTZというマウントアダプタを使わなければならない。以前に一度、何かの撮影で同じレンズを持ち出した時にこのFTZを忘れて困ったことがあった。今回は忘れないように、前日にカメラリュックに詰めておいたので、問題なし。
 コンサートのスケジュールは、午前中にリハーサル、午後が本番。僕はリハーサルが始まる少し前に到着して、演奏前の奏者をスナップする。その時のレンズは、24-70の標準ズーム。奏者と雑談しながらパシャパシャと少し撮り歩いて、さていざリハーサルというタイミングで、レンズ交換するためにリュックを下ろした。

 マウントアダプタを、まずレンズにつけるのかそれともボディにつけるのか、正式な手順があるのかどうか分からないが、僕はなんとなく、まずレンズにつけることにしている。なので、標準ズームをボディから外す前に、まずタムロンとFTZを結合する。方法は簡単、レンズのマウント側のキャップとFTZのレンズ側のキャップを外し、ボディにマウントするのと同じ要領でねじこむだけだ。よし、OK。次に、ボディの標準ズームとFTZのボディ側のレンズキャップを外して、くっつける。

 おや?
 FTZのボディ側のレンズキャップを外して・・・外したいのだけど・・・外れない。
 あれれ?
 回らない? 回らない。
 外れない? 外れない。
 マウントを痛めないように気をつけつつ、ぐっと力を込めて・・・。
 キャップが・・・外れないッ!

 青ざめた。これが外れないと、撮影ができないのだ。ステージではもうリハーサルが始まっている。撮らなければ。でも、いくら手に力をこめても、キャップは外れない。
 困ったぞ。
 しかし、とにかく撮らなければ。キャップを外すのをいったん諦め、サブ機のNikon1に持ち替えてスナップする。とりあえずリハーサル中のオーケストラをひととおり撮った。「リハもちゃんと撮りましたよ」という枚数だけ確保して、それからもう一度、マウントアダプタのキャップと格闘する。やはり、外れない。
 FTZを一度レンズから外し、渾身の力でキャップをねじり上げる。しかし、キャップはびくともしない。うーん、困ったな。そして手のひらが痛い。
 素手で加えられる力には限界がある。そこで、舞台袖のホールスタッフさんに頼み込んで、滑り止めのついた手袋を借りてトライしてみた。やっぱり外れない。スタッフさんは優しい方で、手のひらがすでにじんじんと痛む僕にかわって、何度かキャップをはずそうとしてくれた。でも、外れない。
 どうする、僕?

 方法としては、ふたつ。
 ひとつは、Z6での撮影を諦め、全部Nikon1で撮ってしまう。もうひとつは、いったん自宅に帰って対策をとる。
 できればリハーサルをもう少し撮りたい気持ちもあったけど、でもやっぱりZ6で撮った方が画がリッチなので、僕はホールをあとにして帰宅することにした。幸い、ホールから自宅まではそう遠くない。少なくとも、本番までにはきちんともどって来られるはず。自宅でFTZをなんとかするか、もしどうにもならなくてもAPS-Cのレフ機に持ちかえることはできる。できればレフ機をコンサートで使いたくないけれど、Nikon1よりはリッチな画を吐いてくれるはずだ。

 で、帰宅した。
 作業用の革手袋をして、無駄と知りつつもう一度、キャップをねじり上げる。あー、やっぱり無理。そこで僕は、FTZに布をかぶせハンマーでこつこつと叩き始めた。
 吹奏楽部を教えていて、たまに金管楽器の子が「マウスピースが抜けなくなってしまいました」と僕に相談しにくることがあるのだけど、その学校にマウスピースリムーバー(マウスピースプラーともいう)がなかった場合に、こうやってハンマーで軽い振動を与え続けると抜けることがある。それと同じ事をマウントアダプタにもやってみようというわけだ。マウスピースの場合、10分間たたきつづけてはずれなかったら楽器屋おくりと僕は決めている。なので、マウントアダプタも、とりあえず10分間、たたいてみることにした。
 ときどきキャップの具合を確かめながら、こつこつとたたき続ける。うーん、外れないな。こつこつ・・・外れない。もうちょっと、こつこつ・・・外れな・・・外れた!
 あんなに硬かったキャップが、するっと回った。やった! 

 冷や汗かきました。
 すぐにホールに戻り、幸い、リハーサルがちょうど終わる頃に到着したので、無事、撮影することが出来た。ふう。
 撮影のトラブルってのは時々あるけれど、メイン機材のトラブルってのは本当に困る。だからこそ機材には、スペックとは別に堅牢性や信頼性がもとめられるわけで、ニコンキヤノンのカメラはその点でとても優れているから選ばれ続けているのだろう。しかし、モノである以上はやっぱり、トラブルと無縁ではいられない。ニコンの機材を信頼してはいるけれど、頼まれて撮る時には石橋を叩きすぎて壊すくらいの気持ちでいることが大事だとあらためて感じた。

 さて、そのFTZだけど、あれだけ力をかけてキャップをひねったのに、特にゆがみもなく、ちゃんと使えている。すばらしい堅牢性だ。イイ子、イイ子。だからもう、へそ曲げないでね。ヨロシク。