笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

楽典・音楽通論

f:id:sekimogura:20230125232949j:image

 

 ヴェノーヴァを試奏させて頂いた後、本来の目的である楽典・音楽通論を買うために、三宮のヤマハの二階、書籍売り場へやってきた。

 店員さんに「音楽通論ってどのあたりに置いてますか?」と尋ねたら、首をかしげられ、「ええと、楽典とか・・・」と付け加えるとピンときたらしく、楽典の棚に案内してくれた。そう、楽典の棚。音楽通論というジャンルの書籍は、今はもう存在しないようだ。えええ、昔は普通にあったじゃん。
 楽典の棚には、確かに楽典しかない。僕は高校生の頃、まだ元町にあったヤマハ音楽之友社の音楽通論を買った。今でもあるものだと信じて疑っていなかったので、意外だった。僕のイメージでは、楽典は楽譜の読み方についての本、音楽通論は音楽の基礎知識の本って感じ。どちらかというと、音楽通論的な内容の本が欲しかったので、ちょっとショック。
 それでも、まあせっかく来たのだからと気を取り直し、まずは楽典と銘打たれた本をパラパラとめくってみる。すると、なーんだ、楽典の中にちゃんと音楽通論的な内容が収められている。ちょっぴりだけどね。そうかそうか、そういうことか。音楽通論の内容は楽典にまとめられちゃったわけね。だから、独立した音楽通論の本はもういらないってわけね。なるほど。

 いくつも出版されている楽典、一冊いっさつ、書き方が違う。網羅的に説明しているものもあれば、一問一答式のものもあるし、問題集付きのも何冊かあるなあ。例えば音大、音高受験なんかする人は、楽典を学習参考書的な使い方をするのだろう。小学生ぐらいを対象にしているような、平易な書き方のものもあるし・・・ホント、色々だ。
 ひととおり手に取ってページを繰って、結局、ヤマハ出版から出ている楽典を選んで買い求めた。「中学生に勧めるならコレ、ただし、あまり吹奏楽に偏っていないもの」という前提で、あまり簡単すぎず、ただし難しすぎず、しかもお勉強っぽくないものを選んだ。塩にぎりみたいな、プレーンな楽典。
 面白いな、と思ったのは、コードに関する情報がまとめられていること。僕が子どもの時に読んだ楽典には、コードは載ってなかったぞ。昔、ジャズのリードシートを読むのにコードの意味が分からなくて、しかも新しくコードを読むための本を買うお金がなくて、立ち読みでコードの構成音を必死で暗記したのはいい想い出だ。今の若い人はいいなあ、こういう本があって。DTMなんかも普及してるし、コードを読み書きするっていうのは、音楽を学ぶ人にとってもう、普通のことになっちゃってるのかもしれないね。時代の流れを感じる。
 でも、教会旋法なんかの説明は載ってない。昔の音友の通論には教会旋法が載っていた。これ、僕がルネッサンス以前の音楽を知るきっかけになる知識だったので、結構有り難かったのだけど、省かれちゃったね。クラシックだけじゃなくて、ジャズなんかでも意識する教会旋法、説明がないのは残念だ。これも時代の流れかな。

 さてその楽典、持ち帰ってコーヒー片手に眺めていると、案外忘れていることも多くて、ためになった。内容を理解したり記憶したりしただけでは、何にもならないけど、知っておけば役に立つ知識のつまった楽典、たまには読んでみるのもいいと思った。基礎に立ち返るって、大事。