笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

ブーツのフック交換。

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 以前、バイクに乗っていた名残で、今でも時々、ブーツを履く。
 中学校に行くと、どうしても靴の脱ぎ履きがあるために、ここ何年か足を入れる機会は少なくなっているが、用事のない日や荒天の時には、ブーツを選ぶ。ブーツは好きだ。足ががっちり守られている感じがして、安心感がある。いい。

 ブーツはいくつか持っていて、すべてショート丈のレースアップだ。なぜなら、ロング丈にするとさすがに脱ぎ履きが面倒くさいのと、レースアップはサイドゴアやジップに比べてかっちり締め上げやすいから。
 バイクを降りてから一番出番が多いのは、ソログッドのブーツだろうか。つま先に少し余裕があるのと、履き口がフック仕様になっていて締め上げやすいのが理由。元々は純正のゲルの中敷きが入っていたが、へたって穴が開いたので今は、引き出物でもらったビルケンシュトックの小さめの中敷きを入れている。中敷きはなくたって別にいいのだけど、あった方が歩きやすい。ソールはビブラムのミニラグに張り替えてある。ゴツすぎないのにグリップ力があるのがいい。特に、不整地を歩く時に安心感がある。クレープソールも悪くないが、あれは街歩き用だな。クッション性が高い代わりに、削れやすく、不整地では滑りやすい。砂地でのグリップ不足が顕著だと思う。今はもうあまり関係ないけれど、バイクの乗り降りをするときに足が滑ると危険だ。

 春になって吹奏楽部のお手伝いが小休止となり、少し時間ができたので、体調がよほど悪くない限りは、体力維持のために出歩くようにしている。その時に、散歩では出かけている間に脱ぎ履きがないので、ブーツを久しぶりに履くことにした。
 で、ソログッドの埃を払って足を入れ、ヒモを結ぼうとしたら・・・あれ、フックにヒモがひっかからない。20年近く履いているブーツなので、フックの位置は手が覚えている。その、フックがあるはずの場所へヒモをもっていくのだが・・・あれれ、やっぱりひっかからない。フックがある手応えはあるのだけど、すっぽ抜けてしまう。 なんでだ?
 ジーンズの裾をめくって、問題のところをじっくり見てみる。すると、なんとフックが壊れているではないか。ヒモをひっかけるところが、起き上がってしまっている。おおお・・・こりゃあ、ひっかからなくて当然だ。
 それでも、角度をたしかめながらしっかりヒモにテンションをかけると、何とか結べた。試しに数歩歩いてみて、問題ないことを確かめる。ま、何とかなるな。そう判断したので、そのまま出かけた。

 天気のいい日だったので、東遊園地まで気分良く歩いた。心配だったヒモの具合も問題はない。ただ、めくれあがった金具が時々ジーンズの裾にひっかかるのがうっとうしい。やっぱりこれは、なんとかしないといけないね。
 公園で休憩しながら、修理を頼めそうなお店をグーグル先生に尋ねてみると、東遊園地の近くでは、三宮の高架下にある「ベックマン」というお店がひっかかった。
 ベックマンか、レッドウイングの名作ブーツだね。レッドウイングの専門店というわけではなさそうだけど、ソログッドを持ち込んでも大丈夫だろうか。まあいいや、どうせ帰り道だから、ちょっと寄って相談してみよう。

 場所は、高架下の真ん中より少し西よりの辺り。阪急三宮の西改札のところから高架下に入って、ずんずん進んでいく。高架下も、ずいぶん店の顔ぶれが変わったなあ。昔からあるお店も頑張っているけど、馴染みのない店が増えた。年寄りとしては少し寂しい気もするが、商店街もアップデートしていかないと廃れちゃうもんね。だから、いいことなんじゃない? 

 トアロード手前の、ちょっとモトコー感高めのエリアに入ったあたりに、その「ベックマン」というお店はあった。いいねいいね、まさにシューリペアのお店って感じ。そうそう、これを求めていた。
 意外とお若い、シュッとした好青年な感じの店員さんに、曲がったフックを見せて「これって直せますか」と尋ねると、すぐに出来ると応えてくれた。料金はワンコイン、時間は10分程度だという。ええっ、そんなもんで直るんですか。じゃあすぐやってください。というわけで、フックが曲がっている方のソログッドを預けて、店内で待たせてもらうことにした。
 店の様子を眺めていると、単にリペアをするだけでなく、カスタマイズも受け付けているようだ。オリジナルとは違うソールに張り替えたり、ハトメの色を換えたりできるっぽい。ハトメをフックに換えることもできるようだ。それ、いいね。今度、僕のレッドウィングのハトメをフックに換えてもらおうかなあ。脱ぎ履きの時にヒモを緩めるの、結構めんどくさいんだよね。フックならラクチンだ。
 ソールの張り替えは、ビブラム系だけではなく、クラークスのクレープソールもやってくれるらしい。僕は以前、クラークスのデザートトレックのソール張り替えの相談をしに御影のお店まで行ったことがあるのだけど、ここでやってもらえるのなら近くて有り難い。御影のお店も丁寧でよかったが、次に修理する時はこちらで頼んでもいいかもしれない。

 で、10分もたたないうちにお声がかかって、僕のソログッドの修理は終わった。金具の色目を既存のものにあわせて選んでくれて、全然違和感ない雰囲気に仕上がっている。ブラボーだ、素晴らしい。ありがとう。
 ブーツの修理って、クイックリペア系の修理屋さんでは受け付けてくれないことが多いので、こういうお店が近所にあるのは有り難い。初めてお願いしたけど、仕事も信用できる。また機会があったらお願いすることにしようっと。

 ところで、まったくどうでもいい話なのだが、ベックマンの店員さん、とても雰囲気があってカッコいい。エプロンがよく似合っていて、まさに職人って感じ。ノーマン・ロックウェルの絵みたいだと思った。素敵です。

管楽器を「吹ける」ようになるまでの期間は、1~2年。

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 思ったより咲き始めの遅かった桜は、4月の中頃に盛りをすぎて、今は若々しい葉を芽吹かせている。
 これくらいの季節になると、気温が安定すると同時に、僕の大敵であるヒノキ花粉もピークアウトする。花粉症の僕に、やっと春らしい春がやってくるのだ。マスクを外して表を歩けるのが嬉しい。
 去年、外を出歩くための口実を兼ねてトランペットの練習を始め、秋頃までは公園などで吹いていた。で、寒いと指が動かないので、本格的な冬になってからは自宅でプラクティスミュートをつけて吹いていたのだけど、また外を出歩ける季節になったし、そろそろまた公園通いを始めようと思っている。近くに住宅のない、多少大きな音を出しても迷惑にならなさそうな公園まで、徒歩なら片道30分弱、自転車ならその半分。30分~1時間ほど吹いて帰宅すれば、2時間程度の外出になる。ちょうどいい運動量だ。

 現状、僕のトランペットの技量としては、音域的には最低音~Hi-Dがほぼ確実に発音できて、当たればいいだけならHi-F(を含む第6倍音)の打率は50%程度。そして中音域は演奏で使うことができ、in Bbで「さんぽ(トトロのOP)」のメロディを吹くくらいは問題ない。まあ、何か簡単な曲がひと節、通して演奏できれば、「吹ける」と宣言してもいいと僕は中学生に言っているので、ようはく、「音が出せる」段階から「吹ける」段階にステップアップした感じかな。これくらいの力があれば、M8のポップスの2ndは吹けるだろう。めあては達成できたと思っている。
 しかし、これで十分なわけはなく、最低でもHi-Fは確実に演奏で使えるようにしたいし、ここぞの見せ所でHi-Bbがキメられるぐらいの力は欲しい。あと・・・そうだな、あと一年はかかる気がする。

 だからね、やっぱり管楽器って、人前で吹いて恥ずかしくない程度にまで上達するには、1~2年かかるんだよ。

 それは、他の管楽器の経験がある僕でも同じこと。時々、なかなかうまくならないことに苛ついたりしょぼんとしたりしている若い人を見るけれど、気にすることないよ。そういうもんなんだって。
 常用域の上下に広がる高音域、低音域を演奏するためのフィジカルやコントロールを得るためには、一定量のトレーニングが誰であっても必要で、その成長スピードに多少の個人差はあるけれど、演奏家としての長いキャリアを見渡せばそんなものは誤差の範囲内でしかない。
 ただ、正しい奏法を身につけるために、適宜なトレーニングを行う必要はある。闇雲に練習すればいいというものではない。ここ数年のうちに僕は、崩れたアンブシュアのままトレーニングを重ねて伸び悩む中学生を時々目にした。もちろんアドバイスはしたが、その後一週間ぐらいしてもう一度見に行ってみると、元通りのアンブシュアに戻っていて、「これじゃないと吹けないんです」などと言うから、それ以上はどうしようもなかった。
 そうなってしまう背景はいくつか考えられるけど、原因のひとつにはやはり、焦りがあるんだろうなあと思う。焦り・・・っていうか、早く結果を出したいっていう気持ちだよね。中学校の部活動の現場では、先輩達がアンサンブルの練習に取り組んでいる裏番組で、一年生が1曲仕上げる、なんていうことをよくやるようだけど、そうすると、楽器をもって1年たたないうちに人前で演奏することになるわけだ。そのために無理をし、練習の過程でアンブシュアが乱れ、しかしとりあえず音は出るので本番はこなすことができて、それが成功体験となってしまう。
 そして、その後は矢継ぎ早に本番がやってくる。新入生歓迎の演奏、運動会のマーチ、夏のコンクール・・・奏法を修正してトレーニングやりなおす、という時間はない。で、誤った奏法のままなんとかかんとか本番をしのいでいるうちに、今さら正しい吹き方を覚え直す気力も余裕も失い、伸び悩んだ状態で卒業を迎え、「私は管楽器に向いていなかった」とうなだれて音楽から遠ざかる。

 やっぱり、最初のうちはさ、じっくり時間をかけて正しい奏法を身につけるべきだと僕は思う。そのためには、多少退屈だったとしても、基礎的なトレーニングを積み重ねるべきだ。その期間は、最低1年。まず1年間、演奏のための体作りをじっくり行ってから、奏法の基礎を定着させる。そして、次の1年では奏法が乱れないように気をつけながら演奏を行い、基礎の確実な実践を身につけつつ、上達をはかる。
 逆に言えば、少し我慢してじっくり練習すれば、誰でも上手く吹けるようになると思うんだよね。管楽器って、弦楽器や鍵盤楽器ほどは上達のハードルが高くないはずなんだ。イメージだけど、弦楽器や鍵盤楽器って、ある程度まともに演奏できるようになるまで4、5年かかるような気がする。大学生の頃に、オーケストラに初心者で入ってきた1年生がバイオリンに配属されて、3年生で大シンフォニーを弾いているなんてことはあったりするけど、コンマスコンミス)はやはり経験者が選ばれるし、初心者ながらにトップサイドや2ndトップなんていう奴は、完全に学業を放棄していたもんね。それに比べれば、管楽器はモノになりやすいと僕は思う。きっちりマジメに練習すれば日常生活を犠牲にしなくても、ロマン派のシンフォニーぐらいなら、大学から始めた初心者でも3年次には十分トップをはれる(それとは関係なく日常生活を放棄している奴は時々いたけど)。

 もちろん、そこからさらにトレーニングを重ねれば、色々な可能性を広げる楽しみはまだまだある。
 ただ、最初でつまいづいちゃうと、反対に可能性を閉じていくことになるので、やっぱり物事は最初が肝心だよね。後から修正は可能だけど、中学生に限って言えば、その三年間のうちに修正をいれる余裕はあまりないし、その見通しを本人がもつのも難しいだろう。だから最初の2年は修行期間だと思って、地味な練習に耐えよう。そして、3年生になったら華々しく活躍しようじゃないか、学生諸君。

 さて、僕も練習しようっと。しかし、ここにきてヘビー級の疲労感に襲われている。散歩どころではない。しかし、動かなければ体が鈍る。頑張りどころだな。

クラリオン音域を練習中。

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 クラリネットの練習を続けている。
 他の楽器のトレーニングに割く時間が多いので、クラリネットはあまり吹かないのだけど、余裕がある時にはなるべく触るようにしている。別に本番があるわけではないから曲をさらうわけでもないし、中学生に教える時に伝えられる内容を充実させておこう、ぐらいの感覚だ。なので、スケールとタンギングの練習が中心である。
 リードは、バンドレンのトラディショナル(青箱)をずっと使っている。マウスピースはB40。要するに、中学生とあまり変わらないセッティングだということだ。リードの番手は2.5。練習と練習の間があく時にリードが重いと辛いので、あえて軽い番手を選んでいる。
 まあね・・・せっかくクラリネットを買ったのに、本当に練習はほとんどできていなくて、半年吹いて半箱(5枚)ぐらいのリード消費量なのだ。もうちょっと練習せえよ、と自分でも思うけど、やっぱり本番がないと練習しないなあ。もっとも、今の技量では、それがどのようなレベルの本番であれ、本番が決まってから練習したのでは遅いのだけど。

 それでも、細々とでも続けていることに、練習の意義はある。
 あの難しい、ブリッジ音域のAのキィの操作にも近頃はかなり慣れてきた。A⇔B、Bb⇔BやCっていう動きは、散々やりこみましたよ。そのキィ押さえっぱなしにしておいても、音程や音色に大きく影響しない範囲も段々わかってきた。ここの部分は、運指で困難を回避するという手段を活用した方がメリットが大きいな。これ、全国の中学生に教えてあげたい。彼らの多くは、運指表の指使いを愚直に守っている(特に1年生)。ロングトーンのトレーニングなどでは愚直さが大事だと僕は普段主張しているけど、運指については合理性を優先することも大切だろう。曲の流れによっては、トリルキィを活用するという手もあるぜ。そのパッセージを奏するにあたって、どの運指を選択するかを判断するのは、奏者が発揮するべき創造性のひとつだと僕は思っている。

 で、僕の関心事は次のステップに移っている。
 シャリュモー音域からブリッジ音域が安定してきたので、次はクラリオン音域とフラジオ音域だ。このターム、クラリネット奏者以外には通じないが、要は他の楽器の中音域以上である。レジスターキィを押して出す音域だね。
 僕は、この音域にふたつの課題をかかえていて、ひとつは小指の問題、もうひとつはピッチの問題。

 クラリネットの、小指で扱うキィ群を何と言うのか、正式名称を知らないのだけど、とにかくこの小指キィたち、難しい。何が難しいってまず、スケールの並びによって最適なキィが、右手側なのか左手側なのかを判断しなければならないのが難しい。例えば、記譜上で#が4つのホ長調(in Bbの場合、実調でニ長調)の曲だったとすると、そのスケールを奏する時、Bのキィ、C#のキィ、D#(Eb)のキィを連続して操作するわけだが、ヤマハの低価格帯で一般的な17キィの楽器の場合、D#(Eb)キィが右手側にしか装備されていないために、B→右手、C#→左手のように交互に操作していかないと、合理的な運指にならない。もちろん、小指をスライドさせて片手で済ませるという手もあるし、それはフルートやサックスでは通常の操作になるわけだけど、クラリネットの小指のキィの形状って、あんまり、スライドさせることを考えてないよね・・・。なので、クラリネットの演奏って、この音域を通過する時に、先を見越して運指を決めていかないと、D#(Eb)のキィを押す時に「やべェ!」と冷や汗をかくことになる。
 あと、この小指のキィって、操作感が重いよね! 結構な数のキィが長いシャフトで連結されているので、操作が重い! 機構自体の重量もあるだろうから、ひょっとしたらスプリングも強めなのかな? サックスの左手で扱うテーブルキィもそうだけど、ここのキィの操作感がもっと軽くなる発明ってないのだろうか。メーカーさんには是非、工夫してほしいところだ。

 そしてもう一つの問題が、ピッチ。
 リード楽器はどれもそうだけど、高音域のピッチって下がりがち。サックスもオーボエも高音域は、よく練習して鍛えないと、ぶら下がる。そしてクラリネットも例外ではない。実は金管もそうだよね。初心者のうちは、絞り出して高い音を発音できたとしても、ピッチが上がりきらない、っていうのはよくある。
 だから奏者は、アンブシュアを鍛えて、音域に応じてしっかりコントロールすることで、正しいピッチで演奏する能力を獲得していくわけだけど、まあ楽ではないのですよ。最初のうちは、どうしてもマウスピースを縦に噛むことで発音してしまう。それを、噛まずに、きらびやかないい音色で演奏できるようにするのは、サックスの演奏でそのことをよく知っている僕であっても難しい。マウスピースの形状と大きさが違うだけなのに、どうしてできないんだろうな? でも反対に言うと、マウスピースの形状や大きさが違うっていうのは、案外大きな違いなんだってことだ。だから、同属楽器であってもサイズが違えばそれに応じたトレーニングが必要と考えることができる。それは僕が今まさに、アルトサックスに取り組んでいる理由だ。その楽器を上手く演奏したかったら、その楽器そのものととちゃんと向き合えってことだね。

 秋頃にやっていた、黒本をさらうという練習は、近頃やっていない。フルートの本番があったり、アルトサックスに取り組んでいたりしていたので、その余裕がなかった。言い訳はしたくないと思っているけど、時間と体力のリソースが限られている以上、優先順位をつけるのはやむをえない。クラリネットは、スキマ時間で頑張ります。