笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

春はだるい。

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 認めてほしい。許してほしい。櫛にからまった髪の毛を一本一本取り除くように、私の心にからみつく黒い筋をつまみ取ってごみ箱に捨ててほしい。
 人にしてほしいことばっかりなんだ。人にやってあげたいことなんか、何一つ思い浮かばないくせに。

 

蹴りたい背中」 綿矢りさ 河出文庫

 

 年度が改まった。お世話になっている中学校でも新年度が始まっている。
 新年度になってから、どうも部活の中学生たちの空気が悪い・・・悪くなってきている。学年があがり、クラスが再編成され、学年の先生も顧問の先生も一部いれかわり、そして空気は悪い。元気よくあいさつしていた子の声が小さくなった。練習する表情にも楽器の音にも生気がない。
 こういうのを感じる時、中学生と言ってもまだまだ子どもなんだなあと思う。ちょっとした疲れや不安が、すぐ態度に出る。まあね、無理ないさ。だって、春なんだもん。春は、大人だって疲れるし、不安になる。大人だって本当は、悪い空気出したい。大人だから、我慢してるだけ。

 慢性疲労症候群の僕も、疲れている。
 去年は、五月になるともう少し体が楽だったのだけど、今年は気候が安定しないせいか、どうも調子があがってこない。天気、なんかおかしくない? 暑かったと思ったら急に冷え込むし、雨も多いし。天気のせいなのか春のせいなのか、どうも不安定な中学生に接しているせいなのかは分からないが、僕の体調もなんだか変だ。
 そんな話をかかりつけのドクターにしたら、薬の量を増やしてみようか、ということになり、四物湯(シモツトウ)を増量することになった。薬を増やすと、やはり体は楽だ。夜も寝付きの悪い日が多いので、柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)を飲む頻度も増やした。飲めば、多少眠りやすくなる。
 薬を飲まなくてもやっていけるようになりたいと思っている僕としては、薬を増やすのは不本意だけど、無理をして倒れてしまっては意味がない。

 しかしそれでも、なんだかずーっと、体は重い。四月の末に吹奏楽部の演奏会があって、半日お手伝いしてきたのだけど、特別なことは何もしていないのに、めちゃくちゃ疲れた。なので、心がけて早めに休むようにしたり、運動を少し控えめにしたりしたのだけど、その疲れをGWまでひきずった。疲れると、メンタルも落ちる。なんとなく、やる気がでない。やるべきことはいくつもあるのに、手がつかない。

 近頃どうも、何もかもうまくいかないなあ、という感じがする。
 それが、自分のせいでうまくいっていないのなら、自分で何とかする。でも、周囲の状況や自分でどうにもできないことのせいでうまくいっていないから、どうにもならない。その無力感に、苛々する。誰でもない誰かに対して、なんとかしてくれよって思う。誰も何もしてくれないって分かってても、そう思ってしまう。そういうのも、嫌だ。
 でも、夏を迎えるためには、春をやりすごさなければならない。状況は、改善するかもしれないし、悪化するかもしれないけど、こちらから打つ手がない以上は、やりすごす以外に方法はない。

 世の中を憂しと恥しと思へども 飛び立ちかねつ鳥にしあらねば(憶良)、ってことか。

夏はよ来い。