笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

吹奏楽部はスイングできるのか?

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 僕が遊びに行っている中学校は、コンクールが終わって、次は文化祭にむけての練習が始まっている。クラシックの曲もあるけど、ポップス中心のプログラムだ。YOASOBI、髭男、ベニー・グッドマン
 ビッグバンドのスイングをやったり流行歌の吹奏楽アレンジをやったりするのは、どこの中学校、高校でもやっていることだ。でも、なんかね・・・吹奏楽でやると、ダサいんだな。原因ははっきりしている。楽器と、奏法と、グルーヴが問題なのだ。

 まず楽器。
 クラシックを演奏することを前提とした吹奏楽の楽器は、ポピュラー向きのパリッと軽い音を出すのが難しい。どうしても、シンフォニックなサウンドに寄ってしまう。いい楽器を使っている学校ほど、この傾向が顕著なんじゃないかな。廉価なスタンダードグレードの楽器の方が、ポピュラーらしいライトなサウンドを作れるように僕は思う。
 しかし、安い楽器ならなんでもいいかというとそうでもなくて、廉価な楽器でそろえるとバンドのサウンドが薄く、チープになってしまう。このあたりのバランスが難しいところだ。例えばヤマハなら、アルトサックスであればYAS-82Zのような、ポピュラー・ジャズに特化したモデルなんかを使うと、バランスがいいのだろう。
 まあ、部活の吹奏楽はクラシック演奏がメインなんだから、楽器についてはある程度諦めるしかないなあ。
 でも、でもね、もし可能であれば、せめてサックスには、ポピュラー・ジャズ向きのマウスピースを使ってほしいよね。特に、アドリブソロなんかやる時には、セルマーのS90じゃ物足りない。メタルを買ってくれとは言わないけど、ラバーのバンドレンV16ぐらいならそう高価ではないから、ソロをとるときぐらい、それらしい音を出せるマウスピースを使うことを考えて欲しいかも。

 で、楽器以上に問題なのが、奏法とグルーヴだ。
 これね、クラシックを中心にやってきた演奏者にとっては、なかなか難しいのだ。クラシックではダメといわれていることを、ことごとくやるのが、ジャズやロックの奏法である。強拍は裏返るし、音のリリースは舌で止めなきゃいけないし、「え、それはダメって、先生言ったじゃん」ってことを、全部やる。そうしないと、ジャズにならないし、ロックにならない。つまり、カッコよくならない。
 あと、奏法だよね。教えてもらう機会もないのかもしれないけど、グロウルみたいにクラシックではあまり使わない奏法が使えると、やっぱりカッコいい。遊び感覚でいいから、やればいいのに。うまくいかなかったら、それはそれで面白いじゃん。うまくいくかどうかは別にして、練習しておいて損はないと思うよ。でもね、なんかね、マジメな人ほど、「吹き方が荒れそう」とか言って、やらない。なんでだろう。不思議。
 近頃は、YOASOBIだとかPerfumeだとか、テクノ系の曲の吹奏楽アレンジも増えてきて、これがまた、死ぬほど難しい。何が難しいって、打ち込みのグルーヴレスなムードを出すのが鬼難しい。当たり前だが、吹奏楽は生身の人間が生楽器で演奏するものであり、人間が演奏する以上は自然なグルーヴが生じるのが普通だ。その、自然に生じてしまうグルーヴを消すのだから、基本、無理ゲーなのである。

 でも、ポピュラーはいい。生徒が基本、燃える。コンクールでクラシックをやるときとは違う燃え方をする。わいわいきゃっきゃした燃え方。生徒の中には、クラシックしか好きじゃないしポップスなんかやる気出んという子もいるけど、それでもやっぱり、ポピュラーをやると生徒の熱の入り方が違っていい。
 だからこそ、ちゃんとスイングさせてあげたいし、ロックさせてあげたい。でしょ?