寒くなって、やたらと腹が減るようになった。
何だろう、体が熱を作ってエネルギーを消費しているせいだろうか。僕はもともと、燃費の悪い体だ。学生時代は一日五食、まともに食べていた。歳をとってからはそこまで食べなくなったけど、何か間食を摂らずにはいられない方である。そして寒くなると、その間食の量が増える。食べないと腹が減って仕方がなく、活動のパフォーマンスが落ちてしまうのだ。なので、体調不良のこともあり、間食は制限せずに食べることにしている。
自宅にいるときなら、カップラーメンを食べたりするのだが、外にいるときは、お店に入ったりコンビニで何か買ったりする。そして冬には外で食べるおやつに、僕は時々牛丼を選ぶ。
おやつ牛丼、モーね、これ最高。
吉野家にするかすき家にするか・・・選択肢は豊富だ。でも、寒い日に食べるおやつ牛丼に選ぶお店は、僕の場合、松屋だ。
松屋の牛丼には味噌汁がついてくる。寒いときにはやはり暖かい汁物が欲しい。吉野家のけんちん汁もすき家の豚汁も捨てがたいが、別料金になってしまうのが痛い。だから手軽に済ませるおやつ牛丼ならやっぱり、松屋がいい。
おやつだけど、ケチくさくミニなんかにしない。レギュラーサイズを頼む。そして紅ショウガをたっぷり乗せる。そして牛丼に箸をつける前に、味噌汁を一口すすって、胃袋を温めるのだ。北風に芯まで冷えた体が、内側から暖まる。気持ちいい。ここまでが食前の儀式。そして牛丼のご飯が冷めないうちに、一気に掻き込む。うまい。ほかほかの牛丼は、冬の季語だ。
横浜に住んでいた頃、サラリーマン生活をしていた。横浜に住んでいたのに、勤務地はなぜか八王子だった。就職氷河期、なんとかひっかかって勤めた会社では、毎日残業、毎日終電。燃費の悪い僕は、定時後の休憩時間に社食で夕飯を食べ、そしてまた働いてから終電の時刻に合わせて退社し、駅前で牛丼を掻き込んで、やっと電車に走り込んでいた。駅前には吉野家と松屋があって、月曜は吉野家で火曜は松屋・・・という具合に決めていたっけ。松屋では定食を食べる夜もあった。懐かしい。
春も夏も秋もそうやって牛丼を食べていたけどなぜか、今思い出すあの頃の牛丼の風景は、冬ばかりだ。かじかんだ指で割り箸握って、つゆだくの牛丼に紅ショウガを山盛りにし、終電の時間を気にしながら胃袋を温めていた。うまかったなあ。
あの頃の生活にもう一度戻りたいとは思わないが、牛丼を今でも頻繁に食べるのは、あの頃の記憶があるからかもしれない。その時代の牛丼、一杯290円(松屋の値段。豚丼は280円だっけ)。今は380円する。高くなった。物価が全体に上がっているから仕方ない。でも、あまり高くなるとおやつで食べられなくなるから、あんまり高くしないでほしいな。おやつ牛丼、最高なんだよね。僕のささやかなな冬の楽しみ、牛丼。ヨロシク。