笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

ボックスワイン


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 体重が減って体を悪くする前に、止めたものがある。酒だ。
 別に体を悪くして止めたのではなく、きまぐれに「ちょっとやめてみるか」と断酒した。で、体調が悪くなり、悪くなったので断酒は続けていたのだけど、別に酒のせいで体が悪いわけではないので、また飲むことにした。
 一時、反応性低血糖症を疑われたので、糖質の少ないウィスキーをしばらく飲んでいた。しかし、確かに血糖値がすとんとおちるタイミングがあるのだけど、別のドクターに言わせると「低血糖症と言うほどでもない」ということだったので、まあ別の酒も飲んでもいいか、という気になった。

 久しぶりに、ワインを買ってみた。
 ただのワインではない。いや、高いワインだとか特別なワインだということではなくて、むしろ逆、安くて何でもないワインである。じゃあ何が違うかというと、瓶入りではなく、箱入りだという点だ。
 以前、大学の同級生とLINE同窓会を開いたときに、ワイン好きの同級生が「家で飲むワインは箱入りのやつにしている」と言っていた。その箱入りのワインが安くて手軽で美味しいと、彼女はそう主張していたので一度飲んでみたいと思っていたのを、近所のダイエーで見つけたので、飲んでみることにしたのだ。
 いくつか選択肢はあったけど、一番安い3Lで2000円弱のものにした。3リットル・・・瓶入りのワインが、一本750mlだとして、4本分だ。なので、一本500円のグレードのワインということになる。近頃は一本500円をきるワインも出回っているが、最も廉価な部類に入ることは間違いないだろう。
 面白いのはやはり、箱入りだってところ。まあるい瓶に入っているのが当たり前のワインが、真四角の箱に入っているのだ。ぱっと見、全くワインには見えない。外観の話だけすれば、お徳用の洗剤みたいだ。紙製のボックスに、粉洗剤の箱なんかについていそうな樹脂の把手がななめに仕込んである。持ち上げてみると、思ったより軽い。ホンマに3Lも入っとるんか? そんな風に疑ってしまうほど、手応えは頼りない。
 とにかく買って家に持ち帰り、飲んでみることした。持ち帰ってまず困ったのが、開け方が分からない。瓶入りなら、口がコルクで栓をしてあって、そのコルクをオープナーで引っこ抜くのだけど、もちろん箱にコルクはささっていない。箱をよく観察すると、開け方が印刷してあった。どうも、箱の横のミシン目を破ると中から栓が出てくるらしい。それで、ミシン目を慎重に切ってみると、中から注ぎ口が出てきた。
 プッシュ式の栓を開くと、うわ、出てきた出てきた、ワインが。栓からは、けっこうな勢いでワインが吹き出す。グラスがいっぱいになったところで栓を閉じる。開閉の動作はスムーズだ。ワインもきっちり止まる。雫がしたたるようなこともない。一応、ティッシュで注ぎ口を拭ったけど、ティッシュはほとんど濡れなかった。よくできてるな、この栓。面白い。
 味は期待通り、ややドライな500円のワインだ。普段の晩酌にはむしろ、ちょうどいいライトさだろう。
 毎日グラス一杯ずつ飲んで、三週間ぐらいで飲みきった。後には紙の箱と、ワインの入っていたプラスティックのバッグが残るので、分解してたたんでポイ。手軽だ。素晴らしい。最後の一杯を注ぐとき、注ぎ口の形状のせいでバッグの中に少しワインが残るけど、袋を箱から取り出してはさみで切り込みを入れれば、一滴残らずワインを飲みきることもできる。

 いいじゃん、ボックスワイン。

 ひと箱飲み終わると、体調不良で落ちた体重がかなり戻った。すると、以前感じていた倦怠感もほとんど感じなくなった。そういえば、体調が悪くなる前はずっと日本酒を飲んでいたっけ。止めれば痩せるとわかっていて止めはしたのだが、いつの間にか痩せすぎてしまった。で、体調を崩した。
 体調が悪かった間は、何せ体調が悪いのだから酒は控えておいた方がいいという世間の常識に従って飲まずにいたが、考えてみれば、体の中に取り入れるモノが減って痩せたのだから、それを増やせばまた太るというのが道理だ。別に酒が悪くて体を壊したわけではないのだから、また飲めばいい。それだけのことだったのだ。
 まあコトはそう単純ではないのだろうし、休みをとったり漢方薬を飲んだりと、色々な対処があって回復してきているのだろうけど、ほら、酒は百薬の長って言うでしょ、やっぱり少量のお酒は体にいいんだよ、きっと。