笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

神戸文学館


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 体調は相変わらずよくない。午後には必ず強い倦怠感がやってくる。ひどいときはそのまま夜やすむまで回復しない。それでも、一番悪かった6月や9月に比べれば多少、調子は上向いてきた。集中力も改善しているような気がする。少なくとも、以前よりは長く座って読み書きができるようになった。

 資格取得の勉強をしばらくさぼっていた。テキストを開いても内容がさっぱり頭に入ってこなかったし、レポートを書こうと思っても全然文章がまとまらなかったのだから仕方がなかったのだけど、いつまでも何もしないでいる訳にもいかない。自宅だとついごろごろしてしまうので、資格の勉強は外でする。
 月曜に暇ができたので、資格の勉強をしに出かけた。普段は図書館に行くことにしている。しかし、神戸の図書館は月曜日、全市一斉に休館する。静かにゆったり座れる場所はないかと考えていたら、神戸文学館のことを思い出した。あそこなら静かだし、椅子と机もある。

 神戸文学館は、かつて関西学院大学のチャペルだった建物を利用した文化施設だ。
 僕たちが子どもの頃は、図書館的な施設だったと最近知り合った同年代の人にきいたことがある。なるほど、そういう流れで、文学館なんだね。
 文学館では、神戸にゆかりのある文筆家の遺品や資料を展示している。古い雑誌や、肉筆の原稿、作家愛用のペン・・・僕的には中々興味深い展示だ。しかし、一般に名を知られている作家の展示はあまりない。だから、訪れる人はほとんどいない。村上春樹さんの展示なんかがあれば、もっと人も集まるんだろうけどなあ。そういうわけで、文学館はいつ行っても静かだ。まあ、それも僕的には、有り難い。
 チャペルだったという文学館の建物は、とても美しい。レンガ造り。尖塔がエントランスになっている。重厚な扉をあけて入館すると、両耳を心地よい静寂が覆う。聖母の歌声のような、柔和な静けさである。
 おそらくかつて礼拝堂であっただろう場所が展示スペースになっていて、そこにはいくつか座席が設けられており、自由に座ることができる。机もある。僕は机に資料を広げた。しばらく勉強して、ああお腹空いたなと思ったら、もう一時間半たっていた。久しぶりに集中できた。
 僕が文学館に滞在している間に、僕以外の来館者は、おふたり。入館無料のオープンな場所なのだから、もっと来館者があってもよさそうなものだけど、こういう場所があることを誰も知らないのか、それとも誰も文学になんて興味がないのか、とにかく人は少ない。
 パンデミック以前も、来場者は少なかった。でもやっぱり、せっかく開けているのだからもうちょっと人が集まるような展示やイベントを工夫すればいいのになあと思う。以前は月に一度くらい、文学講座やコンサートを開いていたはずだけど、それも今はやっていないだろう。僕にとっては、ここが静かで過ごしやすい場所であることは有り難い。だけどさすがに静か過ぎやしませんか?
 2021年10月現在、日本のコロナウィルス新規感染者は低い水準だ。安心はできないけど、事態収束の出口が見えかかっているような気もする。社会がコロナを駆逐できたら、文学館も少しは賑わうだろうか。賑わう日があってもいいと、僕は思う。


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