笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

デザートトレックの修理


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 クラークスのデザートトレックという靴を履いている。
 僕はこの靴をとても気に入っている。幅が広いので、ひどい外反母趾の僕の足がストレスなくおさまるからだ。軽さと柔らかさもちょうどよく、快適だ。スタイルも、ドレスシューズやビジネスシューズでは堅苦しいが、スニーカーほどドレスダウンしたくない時に重宝する。センターシームもお洒落だ。
 この靴のソールはちょっと特別で、クレープソールというらしいのだけど、やわらかい発泡ゴムみたいな素材でできている。軽くてしなやかなので、とても履き心地がいい。
 あまり出番は多くないが、六年ぐらい履いている。するとやはり、ソールは減ってくる。最近、かかとのあたりが減ってきたので、持ち上げてソールの具合を確かめたら、減ったかかとの奥に靴底の構造物がのぞいていた。修理の時期がきたらしい。
 僕がふだん靴底の修理を頼む店はいくつかあるのだけど、このクレープソールの修理はどこも受けてくれなかった。材料が手に入らないのか、修理が難しいのか、そのへんの事情はよくわからない。とにかく「あー、クラークスですか、うちではちょっと・・・」と断られてしまった。
 仕方がないので、グーグル先生にクラークスの修理を受けてくれる店を訪ねてみた。すると、東灘の店がヒットした。山の手緋色館というらしい。まずは電話してみた。
「クラークスの修理をお願いしたいのですが」と切り出すと、いつでもご来店くださいと応えてくれた。ありがたい。数日後に靴を持っていくと、オールソールはまだ必要ない、かかと部分の継ぎ足し補修だけしましょうということで話がまとまった。さらに十日ほどして靴を受け取りにいく。すり減っていたかかと部分には新しいゴム材がきれいにかぶせられていた。美しい仕上がりに僕は感心した。
 身の回りのもので、気に入っているものは長く使いたい。しかし、モノである以上は使うほど消耗するのが当たり前。消耗すれば修理が必要になる。自分でできる修理もあるけれど、素人にはできない修理もある。だから、自分では難しい修理を頼める人がいるというのは、とても心強い。
 僕が学生の頃は、使い捨て文化全盛の時代だった。今でもそうなのかもしれない。消耗したら廃棄して、新品と取り替える。その方が安上がりで経済的なのだろう。それを悪いことだとは思わない。けど、古いものを修理して使い続ける文化やシステムも大事にしたいし、そういう文化を引き継いでくれる人や組織があることは、とても有り難いことだ。