クラビノーバはヤマハが製造する電子ピアノだ。僕の家にはこのクラビノーバが一台ある。僕が練習したくて買った。しかし管楽器ほど夢中にはなれず、あまり熱心には弾かない。だから全然上達しない。それでも、いつかリストやラフマニノフが弾けるようになる日がくることを夢見て、細々と続けている。
電子ピアノの美点は、深夜でもヘッドフォンで練習できることと、調律の必要がないことだ。しかし、機械である以上、全くのノーメンテナンスで使い続けることもできない。しばらく前から、低音側の鍵盤から異音がすることは分かっていた。あまり弾かない鍵盤だから無視していたのだけど、やがて鍵盤全体のタッチが悪くなり、頻繁に使う音域からも異音がし始めたので、修理の依頼をすることにした。
購入店に電話してリペアマンの派遣を依頼した。その数日後にリペアマンがやってきて、電子ピアノのカバーを開けた。もっとぎっしりと部品がつまっているのかと思いきや、中は意外なほどすっきりしていた。
中身は、僕の見たところ、鍵盤、センサー、制御基盤、アンプ、スピーカーで構成されている。アンプとおぼしき基盤にはコンデンサが刺さっていて、リペアマンは「最新機種だと、ここもデジタル回路なんですよ」と教えてくれた。リペアマンは鍵盤の具合を確かめ、クッションのフェルトとセンサーのラバー接点を交換した。たったそれだけのことだったが、弾いてみると驚くほどタッチがよくなっていた。異音もしない。
よしよし、これでまた楽しめる。後は僕の腕前の問題だけだ。こっちも、関節と筋肉の交換でチャイコフスキーがすぐに弾けるようになったりしないかな。ならないか。ならないよな。
うん、仕方ない、練習しようっと。